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夜更かしと交ぜてほしいもの
​※なんでも許せる方向けです。
​ エメアゼヒュの3Pですが、アゼムしか受けではありません。

なんでそんなこと思ったのか、言ってしまったのか、自分でも理解に苦しむのだが酔っ払いという思考の中であればそれはもうナンセンスだ。
「本当にするの?」
「お前がしたい、て言ったんだろう」
「今更なしはだめだよ、アゼム」
 長身の男二人に見下ろされ、茶髪の彼、アゼムは酒で心地よい中ではあったが自分が言ってしまったことへの事態に後悔している。

 今夜はアゼム、エメトセルク、ヒュトロダエウスの三人で遅くまで行きつけの店で晩酌をしていた。アゼムの話に花が咲くのはいつものことで、時間はいくらあっても足りないものだ。
 もう一杯、もう一杯とグラスに注がれるアルコール。次第に頬も耳も真っ赤にして、饒舌になり言葉を交わす。
 珍しく制することなく酒を口にしてしまった、とエメトセルクも酔いのせいで風が気持ちいいと笑っていると思ったら、黙ったまま俯き今にも吐きそうな顔をしている。ヒュトロダエウスは笑い上戸で小さなことでも大きな声で手を叩いて笑っている。
 そう、三人共が酔っ払うことなどさも珍しいことだった。
 一番酒が強いであろうアゼムももう飲めない、といくつか空にした瓶の中で突っ伏してしまっていた。
 そんな時、ふいに、なんとなく、思ってしまった。
「なぁ、今から三人でセックスしない?」
 そう唐突にアゼムは提案したのだ。
 いつもならお前は何を言い出すんだと、エメトセルクが一番に怒り出すのだが今日はそんなことはなかった。
 重く酔っ払った淀んだ声で、いいぞ、と言う。
 なんだか目は据わっているせいか、いつも以上にテンションは低いし怒っていそうだが賛成らしい。
 ヒュトロダエウスと言えば、いいね!、と言って目を爛々と輝かせていたのだ。
 三人は店を後にすると一番近い家、ヒュトロダエウスの家へとふらふらとさせた足で向かった。
 肩を組んでいないと歩けないほどの酔っ払いたちはなんとかして階段を昇り、アパルトメントまでたどり着く。ヒュトロダエウスが鍵を開けると雪崩れ込むように入り、エメトセルクはアゼムの腕を掴んで自分の方へ向かせると、熱い頬を包んで酒臭い唇にキスをした。
 あっ、という間に腰を抱かれ、唇を貪られるとアゼムは苦しそうに息を継ぐ。
 今すぐここで始めてしまいそうな二人を見かねてヒュトロダエウスは不満そうに唇を曲げる。
「ああ、もう、ベッドはあっちだよ」
 ヒュトロダエウスはもう片方のアゼムの手を引いてエメトセルクから引き剥がすと狭い廊下を千鳥足で歩き、寝室へと誘導する。
 アゼムは暑い、と言いながらローブを脱ぎ捨ててそのままベッドへ飛び込むと白いシーツが大きく舞った。
 そのアゼムの覆い被さるようにして重なるのはエメトセルクの体躯だ。両手を付いてアゼムの肩を掴み、仰向けにするとベッドに膝を乗せてそのまま半開きの唇を再度奪う。
 今日の彼は些か早急で積極的だ。
 どうも極限まで酔っぱらってしまうとエメトセルクの場合、素面のような顔をして欲求に対し素直になっていくらしい。ある意味一番質が悪いだろう。
「あ、ふあ」
 息継ぎにエメトセルクの顎を掴んで顔を引き剥がそうとするが、力負けをしてしまったアゼムの呼吸はほんの数秒しか吸えない。
 舌を強引に口腔へ差し込めばぐるりと滑る感触が下の歯、上の歯、奥歯を舐める。
 ひくりと肩を揺らして、座っていた腰がどんどんとその荒々しいキスに砕けていってしまい、自分の腹も酒とはまた別の熱を生み出す。
 エメトセルクもローブを脱ぎ去ると熱くなった手をアゼムの火照る肌へと滑らせた。
「キミってそんな風にいつもアゼムを抱いているのかい?」
 意外だね、とその冷静さもない手と離さない唇にヒュトロダエウスは声を楽しげに震わせて観察している。
 エメトセルクはちらり、とヒュトロダエウスを見たが、気にすることなくアゼムのだらしなく唾液を零した唇を吸っては食んだ。アゼムは夢中になって咥内を犯す舌に自分の舌を縺れさせている。
 ヒュトロダエウスはどちらかと言えば二人の睦事を見ている方が趣向とでもいうように、じっと見つめ唾を飲む。エメトセルクがそのままアゼムを押し倒すと思っていたが、彼は濡れた唇を離してアゼムの身体を反転させ、後ろから抱き締めるように自分の腕の中に座らせた。
「ヒュトロダエウス、お前もそこに立ってないでさっさと来たらどうなんだ」
 ねっとりした視線に射られたままでも落ち着かない、とエメトセルクはヒュトロダエウスを呼んだ。彼の手がすっ、とアゼムの腹を摩り薄っすらと髪と同じ色をした茂みを撫でて内腿を開かせ、両膝を立たせる。
 その手は欲望の中心に触れはしない。
 敏感な肌だけを摩って、焦らす。首筋に熱い吐息が触れて、アゼムの身体は期待に震えた。
「アゼムがお前を待っているだろ」
 ほら、見てみろ、とエメトセルクはヒュトロダエウスに緩く勃ち始めたアゼムの性器を見せる。エメトセルクに対して曝け出すのはもう慣れてはいるが、ヒュトロダエウスに性的な部分を見られる、ということにまだ羞恥という理性が残っていた。
「というか、ワタシが混ざってもいいものなのかな」
「何を言っている、こいつが三人でしたいとか言い出したんだ」
 アゼムが望んだことなら私は構わない、とさもそれが正しいことだ、という態度でこの爛れた行いを受け入れている。
「本当に、するの?」
 思わず、なんだか怖くなったのかアゼムはそう聞いてしまった。酒が入ったテンションの思い付きだったが、このエメトセルクが本気にしてヒュトロダエウスにまで煽っていくとは思わなかった、というのは本音だったが言ってしまったのは自分だ。
 この酔っぱらっていないようで誰よりも深く酔っているらしいエメトセルクの本気は曲げられないようだ。
「お前がしたい、て言ったんだろう」
 自分は酒の熱が引いてきたがまた別の熱に身体は支配され始めている。
「今更なしはだめだよ、アゼム」
 ヒュトロダエウスはエメトセルクの承諾を得たことは最大の肯定だ、と捉えたのかにっこりと微笑んでベッドへと上がり、その輝く紫の瞳でアゼムを見つめた。
「あっ」
 喉が引き攣り、声が詰まる。
 ヒュトロダエウスの手がアゼムの一番熱いものに触れた。長細い指がゆっくりと折れて、滾る陰茎を握る。
 待って、と声に出したつもりでもその言葉は自分の呼吸に消えて、ただの濁った吐息に飲まれていく。意図を持ってその指が動き、指で輪っかを作ると彼の竿を包んで上から下へと動かしていった。
 アゼムは唇を噛んで、太めの眉を寄せ、耳まで真っ赤にするとその耳朶をエメトセルクが後ろから優しく噛んだ。驚きとそこから伝わる痺れに背中がぴん、と伸びる。
「は、ぁ……や、」
 エメトセルクはアゼムの耳たぶを食んで、そこから項、首筋、肩へと唇を下ろしていく。それから手を腹から上げて平らな胸を手のひらで撫でる。
 手のひらに早くなっている心臓の音が伝わりそうだ。吐く息は誰もが酒の匂いがしていた。
 ヒュトロダエウスはアゼムの蕩けていく表情を見ながら何度も雄を扱き、エメトセルクは彼の胸の小さな飾りを指の腹に挟んだ。
「はっ、あ、あぁ」
 きゅっ、と粒を指で摘ままれ、押し潰され、また突起の周りを指先が撫で、そしてまた摘まむの繰り返しだ。痺れる痛みが快楽となって、身体の中を駆け巡る。その間、ヒュトロダエウスは陰茎をさらに弄り続ける。
 先走りの液が出始めた先端を面白そうに指で引っ搔けばアゼムは気持ち良さそうに啼いた。
「すごいたくさん出てきたよ、アゼム。気持ちいいんだね」
 わざわざ言わなくてもいいのにヒュトロダエウスは声に出して今、アゼムのペニスがどういう状態なのかを耳元で囁いてくる。
「先から透明な液体、それを塗ってあげるね。ああ、ぬるぬるしていてワタシの手もべたべただ。まだ出てくるよアゼム、どうして欲しいのかな。キミのこれは」
 ヒュトロダエウスはくすくすと笑って、アゼムの限界まで硬くなってしまった雄を扱く。言葉の通りに、先からは溢れる透明な体液が根元まで湿気を帯びて濡らしている。
 くちくちと、いやらしい音が聞こえてくるほどに。
 俯けばその自分も浅ましい熱が欲情し、ヒュトロダエウスの手を汚している光景が映り動悸がさらに激しくなった。
 つっ、とエメトセルクの唇が項を吸うと小さな赤が色づく。背中から感じる彼の熱がさらに自分を欲情へと誘った。
 ヒュトロダエウスに下肢を、エメトセルクが胸をしつこく、一つの熱ではない熱が触れることが理性も知性も吹き飛ばしてくる。
 三つの熱、息、肌、全てが欲にまみれている。
 今更なし、だなんて言うわけがない。
 もしこのままにされたらこの熱をどこに放出すればいいのかわからなくなってしまう。
 エメトセルクとヒュトロダエウスの三人で気持ち良くなりたい、と頭はそればかりに貪欲になっていく。
「あ、う……っ、ン」
 エメトセルクは指先で片方の乳首を摩りながら、片方の手で顎を掴むと顔を後ろへ振り向かせ、開いた唇を唇で塞いだ。ぬるりと入ってくる舌を絡ませて、唾液を口端から垂らす。
 すると次にヒュトロダエウスは一度、アゼムのペニスから手を離し二人と同じようにローブを脱ぐ。三人の中では一番体の線は細く、色白の方だった。
 そして身を屈めると、躊躇なくアゼムの股へと顔を埋めて屹立した雄を口へと運んだ。
「ん、ンンっ、ぁ」
 アゼムの腰が思わず逃げるように動いたが、エメトセルクがいるためその場からは逃げられない。
 ヒュトロダエウスのざらりとした舌が先端を舐め上げ、ゆっくりと喉の奥までアゼムの熱を咥え込んでしまった。膝を震わせて、彼の舌から伝わる刺激が性器を介して腹へと響いてくる。
 呼吸を求めて唇を離しても互いの間で舌先と舌先が執拗に絡んでいる。
「あ、う」
 自分の張り詰めた雄はヒュトロダエウスによってさらに膨張していくのを感じた。表面の舌で竿を丁寧に舐め上げて、先端の割れ目から零れる液体を吸う。
 それから手も添えて根元から二つの袋を揉めば、さらなる快感に身体は溺れて行った。
 体液、唾液が混ざり合いヒュトロダエウスの咥内からは響く水音。
 ペニスの裏筋を舐めてゆっくりと口を動かし、口の中で締めればアゼムの声が切羽詰まったものに変わっていく。
「だ、だめっ、ひゅと、ぁ……えめっ、うっ、」
 もう出そうだ、とアゼムは痙攣する身体を抑えられずに首を振ってヒュトロダエウスの頭を掴み、離して、と呂律の回らない言葉で言う。しかしヒュトロダエウスは離すことはなく、上目遣いでアゼムを見ると目元だけで笑った。
 アゼムは背中をエメトセルクに預けながら、腰を揺らし迸る熱が集中していくことに頭がいっぱいになる。このままではヒュトロダエウスの口に出してしまう、と思ってもヒュトロダエウスはそれを望んでいるらしい。
 エメトセルクも早く達してしまえ、と思っているのか自分ではない男の口淫で乱れる姿だというのに静かに興奮している様子だった。彼の臀部に当たる彼の硬くなった熱が顕著に告げている。
 身体の中心から沸き起こる悦楽に、アゼムは頭の中を真っ白にさせた。
「あ、ぁあっ、イく──っ」
 もうこれ以上は我慢できない、とアゼムは声を詰まらせて絶頂を迎える。
 エメトセルクの肩口に後頭部を擦り付け、背中を撓らせると勢いよくヒュトロダエウスの口腔へ精を吐き出してしまった。迫り来るその急激の熱は全身から汗を拭き出させ、身体を震わせる。
 ヒュトロダエウスはアゼムの熱い欲情を零さないように飲み込み、全てを吸い出そうとしばらく咥えたままだったが、ようやく緩くなっていく雄の形に口を外した。白濁した液をとろりとまだ零している。
「はぁ、は」
 痙攣するアゼムを後ろから抱え、エメトセルクは潤む瞳を覗き込む。
 アゼムは汗で濡れた髪と頬を彼の頬に擦り寄せて、浅い呼吸を繰り返した。その開いた唇から見える赤い舌と溶けた息は煽情的でエメトセルクの男を駆り立てるには十分だった。
「アゼム」
 エメトセルクはぐったりとしたアゼムの身体をうつ伏せにさせる。
 彼は身体を動かすのも億劫なのか、されるがままにベッドに顔を埋めて、膝を立てた。
 ヒュトロダエウスはその様子を座って眺め、アゼムの髪を撫でた。その優しい手つきに目と閉じて、大きく息を吸えばエメトセルクの手のひらが自分の白い尻を撫で、腰を上げさせた。
「いい眺め」と、ヒュトロダエウスが零すと同時に、エメトセルクの指先が自分の後ろの皺の穴を摩っていることに感じた。
 はあ、と感嘆しその指が何をどうしていくのかを想像してしまい落ち着いた熱がさらに灯る。ベッドシーツを掴み、額を擦り付ける。
 エメトセルクの指が入り口を優しく撫でると、その穴は収縮する。
「あ、ぁう……」
 いきなり指は入って来ずに慣らす動きをする。窄まりをマッサージするように撫でながら、その丸みの帯びた尻をも撫でる。
 アゼムは呼吸を切らし、腰からまた粟立つ快楽に身が焦がれていった。
 エメトセルクの指先が少しだけ入り、また周りを摩る。するとヒュトロダエウスがいいものがあるよ、と言って彼に小瓶を投げて寄越した。
 どうしてそんなものがあるのか、とは聞かないでおいた方がいいとそれを手に取ったエメトセルクは黙って蓋を開ける。
「うっ、」
 蓋を開ければとろりした透明の液体がアゼムの尻へと零れ落ちた。触れた瞬間は冷たくて呻いてしまった。それはただの液体ではなく、粘る質感。滑りをよくするための道具、潤滑油だ。
 それを窄まりに塗り付けて入れてみれば、簡単にエメトセルクに指を受け入れた。
「あ、ぁぁっ……ふ、」
 背中を撓らせ、侵入してくるぬるりとした指の感触にアゼムは熱い吐息を落とす。潤滑油のおかげですぐにその隘路の肉はほぐれるような音を立て始めた。
 エメトセルクはゆっくりとその肉壁を押し拡げ、もう一本指を増やして円を描くようにほぐしていく。アゼムのそこは狭く拒んでいたが、次第に求めるように指を喰い込んだ。
 アゼムの下肢はまた次第に熱を帯び始め、だらしなく先端から体液を零しながらその硬度を取り戻していた。
「えめ、っ、そこっ、ぁ」
 そうすることによって内部を抉るエメトセルクの指先がこりっ、した小さなしこりに出くわす。そこは性器が勃起をしてくると堅くなって気持ちよく箇所だ。身体は大きく震え、シーツに顔を埋めた。
 嫌だ、と言われようがエメトセルクはそこに触れることをやめない。何度もそこを指の腹で摩って突けばアゼムは苦しそうに眉を顰めた。
 いや、苦しいわけではないのだ。
 毒のようにゆっくりと身体を浸食していく熱欲に魘され、じわじわと甘い痺れがおかしくさせる。
「アゼム、キミだけとても気持ちよくなってズルいよね」
 ふと耳に届く声に顔を上げた。
 にっこりと笑ったヒュトロダエウスの顔がばんやりと視界に見える。そして彼はこうも言った。
「ほら、今度はワタシを気持ちよくして欲しいな」
 そう言って、ヒュトロダエウスはアゼムの前に自分の誇張した雄を出したのだ。その熱欲を頬に宛てれば火照った頬より生々しい熱さだった。
 それをどうして欲しいかなんて聞かなくてもわかっていた。
 アゼムは口を開いてヒュトロダエウスの雄をさきほど彼がしていたように、亀頭から口へ含んだ。独特の雄の香りと先走りの液の味が広がる。
 アゼムは目を瞑り、舌を必死になって這わせた。
 亀頭と竿の境目にあるカリの窪みを丁寧に刺激し、亀頭と一緒に吸い上げる。アイスクリームを舐めるようにちろちろと裏筋を舐めてみて、変化をつける。
 唾液を含ませて上下に顔を揺らし濡れた音を聞かせた。
「ああ、上手だね。いつもそうやってエメトセルクにしてるんだ」
 ヒュトロダエウスはわざとらしく煽ってやると、先にエメトセルクの眉尻が動いた。
 アゼムはというとその言葉など気にしていない。夢中になってヒュトロダエウスの雄をしゃぶっている。
 自分ではない男の股に顔を埋めて何をしているのかと、少しだけ嫉妬をしたがエメトセルクは鼻をフン、と鳴らして指を引き抜いた。それからすぐにその濡れ拡がったアナルへと自身の太く硬くなった欲望を宛がうと、拒否権などもなくそのまま肉を抉った。
「──っ、ぁあ」
 指とは違う熱と欲の塊が隙間ない場所に侵入してくるとアゼムはヒュトロダエウスの陰茎から口を離し、深くてもっとも熱い息を吐き出した。
 狭い肉の間を穿つ太くて硬い熱が容赦なく身体の中を焦がしていく。
 両手の親指で小さな穴の皺を拡げ、腰をゆっくりと進めていけば、アゼムの汗ばんだ背中が震え続けた。
 浸食を始めた熱が最初は奥まで届くことはなく、浅く抽送を繰り返している。そのたびの彼の先端が指でも刺激された箇所を擦っていくのだ。
 そのたびにじゅくじゅくと爛れる欲望が喉から、そして自分の雄から吐き零れていく。
「あっ、エメっ……ク、ぁ」
 緩くなりつつあるその肉壁が何度も貫かれると、潤滑油とエメトセルクの先走りによって湿っていき擦れるたびに粘る音を吐息と一緒に重ねた。
 エメトセルクが大きく腰を前後に揺らせば、アゼムは前歯を噛んで荒くなる呼吸に眉を顰める。
「アゼム、だめだよちゃんとこっちにも集中してくれないと」
 自分の股の間で悶えるアゼムを見下ろして、ヒュトロダエウスは顔を上げさせると自分の張り詰めたペニスを彼の口元へと運んだ。
「ひゅと、うっン」
 言葉を発する前にアゼムの口へ自分も勃起したペニスを差し込む。アゼムは身体を揺らしながら、ヒュトロダエウスの熱い欲望へとまた必死になって舌を這わせた。
 もう頭の中で何が恥ずかしいことなのか考える暇も抵抗もない。
 ヒュトロダエウスがこれで気持ち良くなってくれるならたくさんしたい、と短い睫毛を震わせて口の中で淫らに犯した。
 ちらりと視線を上げればヒュトロダエウスの紫色の宝石の瞳がこちらを見ている。目と目が合うとそのしっとりとした瞳に腹が熱くなった。
「アゼム、」と、ヒュトロダエウスが吐息の熱を上げて名前を呼ぶ。気持ちいいよ、とも言って頭を撫で、喉奥まで進め頭を掴んで自分からも腰を振った。
 そうされると吐き気に似たものが喉から込み上げてくるが、ヒュトロダエウスに頭を掴まれているから咽るしかできなかった。
「アゼム、ちゃんとこっちにも集中しろ」
 今度はエメトセルクがどこか不服で嫉妬しているような声色でそう文句を垂れた。
「あ、ぐ」
 ぱん、と肌と肌がぶつかる乾いた音が響いて、すぐにエメトセルクは埋めた欲の塊を強く打ち付ける。
 灼熱が何度も深く行き来し、熱を孕ませていく。滑るその隘路は赤く擦れて形を覚えて行った。獣のように腰を振ってその精を叩きつけるまで止まらない。
 アゼムは自分から揺れているのか揺らされているのかわからないほど、陶酔していた。
 三つの熱がそれぞれ我慢できないほどに張り詰めて、はあ、はぁ、と荒くて色欲に浸食された呼吸が混ざり合う。
「ああ、アゼム、そろそろイキそうだっ」
 ヒュトロダエウスは声を詰まらせてそう告げると、口の中から引き抜いた。そしてそのままの勢いで自身の手で扱くと、アゼムの顔面に向かって精液を飛沫させる。
 その生暖かい白い液体が頬や鼻先を汚したが、アゼム自身は汚いとは思っていない。むしろ舌を出して垂れてくる精を舐めとった。
 目じりに涙を薄ら溜めて、頬を朱色にし、まだ物欲しそうに瞳を滲ませるアゼムにヒュトロダエウスはまだ興奮冷めやらぬ欲情の視線で見つめた。
 しかしヒュトロダエウスとの情事が終わっても、まだ熱の連鎖は途切れていない。
 エメトセルクはそれを見届けたあとにいっそう激しく貫いた。
「あ、ぁ、待っ、……ぁあ、は」
 沈みそうになる腰を掴み上げて、ぴったりと根元まで埋める。そしてまた先までずるりと引き抜いて一気に奥まで戻す。それを繰り返すとアゼムの嬌声は苦しく悶えるものになる。
 額をシーツに擦り付けて、ぎゅっと目を瞑る。
 ヒュトロダエウスは達した余韻に浸りながら、あとはこの二人の睦事を特等席で眺めることにした。
「アゼムもまたイキそうだね」
 ふいに手を前から伸ばし、アゼムの身体の下へ伸ばしていくと勃起して震えている雄へと触れる。
「だ、めっ、触った、ぁら」
 ヒュトロダエウスに触られると、思わずきゅっ、とアゼムはエメトセルクの熱情を締め付けてしまう。
「っ、アゼム、」
 いきなり締めるな、とエメトセルクは苦悶の声を漏らしながら穿つ欲望の行方を望んでいた。うわごとのように名前を呼んで背中にキスをする。一つになる熱欲に魘されてエメトセルクは容赦なく、その乱暴な熱をアゼムの中へと奔出させた。
「あ、ぁあ──っ」
 それと同時にアゼム自身もまた絶頂を迎える。
 一つの吐き出した劣情は腹へと流れ、もう一つはヒュトロダエウスの手の中で。
 波打つ激しい鼓動が耳鳴りを起こして、アゼムは身体の力を失ってそのまま膝を崩して倒れ伏せるとエメトセルクも重なって被さる。
 背中が熱くて早鳴る彼の鼓動と息が聞こえた。
「エメト、セルク」
 掠れた声で名前を呼ぶと、腹を摩られる。するとそのまま身体を引き上げられてしまい、ずるりと彼の雄が抜けた。
「あっ」
 声を出してすぐに向かい合わせにさせられると、膝を付かせてエメトセルクは自分を跨がせる。脇から腰、外腿へと撫でて精液で汚れた頬を指先で拭ってやった。
 見上げてくる煽情に満ちたその金色の双眸を見て、アゼムは言葉を詰まらせる。
 まだ彼の熱は収まっていないのだ。
 腰を下ろすようにエメトセルクの手が促してくると、アゼムは彼の肩を掴みながら首を振るがそんな抵抗には意味がない。
「待って、まっー」
「待たない」
 エメトセルクは間髪入れずにそう言って、吐き出した精を零しながらまた緩く勃ち上がっている自身の熱を、アゼムの窄まりへまた宛がった。
 アゼムは唇を震わせて侵入してくる暴力的な熱を受け入れる。潤滑油などもう必要などないほどに、そこはエメトセルクの吐き出したもので濡れているためすんなりと挿っていく。
「あ、う……、は、はぁ」
 熟れた箇所から伝わってくるその痺れは脳髄まで焼き、身体の自由を奪っていく。
 甘くて痛みを伴うその刺激は自分の中心を焼き焦がして、快感を享受する。
 突き上げてくる甘美にアゼムは蕩け落ちた。エメトセルクに揺さぶられ、手のひらが頬を包むとキスを強請った。自分からも腰を擦り付けて振れば、彼は気持ちよさそうに目を細め、それを見るのがアゼムは好きだった。
 エメトセルクは背中を倒すとアゼムの好きにさせる。
 自分から腰を浮かせ、また沈めその擦り上げられる感覚に酔い痴れて何度も何度も繰り返した。
 それをベッドサイドに座りながら眺めていたヒュトロダエウスだったが、ムラムラする衝動に耐えられずに、二人に近寄る。
「ワタシも混ぜて欲しいなぁ」
 そう言って、ヒュトロダエウスはアゼムを背後から抱き締める。
「ヒュト、ぁ」
「親愛なるエメトセルク、キミのアゼムを少し分けてほしいんだけど、いいかな」
 からかうようにしてアゼムが跨っている男に聞いてみれば、彼は眉尻を少し動かし考えると、仕方ないな、と言わんばかりに睨んだ。
 エメトセルクはペニスを抜くとその拡げた箇所をヒュトロダエウスへと譲った。
「待っ、だめっ」
 ひくひくと蠢くそこへと今度はヒュトロダエウスの硬くなった肉欲が宛がわれると、アゼムは喉を逸らして苦痛と快楽の狭間の声を漏らした。
 アゼムはエメトセルクの肩を掴み、顔を埋めると汗で濡れた髪がエメトセルクの鎖骨辺りをくすぐった。ヒュトロダエウスはさっきまでエメトセルクの熱が埋まっていた隘路へと自分の熱欲を押し進める。
 膣のような包み込む弾力のある場所ではないが、そこはもうしっかりと爛れ熟れている。
 エメトセルクが吐き出した欲がまだ内部を湿らせていて、陰茎の先からゆっくりと挿入していけば中からは白濁の雫が腿を伝って垂れていく。
 ヒュトロダエウスは夢見心地に瞳を滲ませて、重たく色を乗せた息を吐いた。肩口から緩く編んだ三つ編みの髪が気怠そうに落ちる。
「さっきまでエメトセルクがいたせいかな、とても熱くて、すんなり奥まで入っちゃう」
 腰をぐっ、と擦り付けて奥まで挿ってしまうと上半身を屈めてそう囁けば、アゼムの背中が法悦に震えた。
「あ、ぁ、はあ」
 中で円を描くように揺らしてみれば、エメトセルクとヒュトロダエウスに挟まれたアゼムが逃げ場のない身体を捩る。
 ヒュトロダエウスが腰を振り続ければそこからは粘る液体の音が混ざって聞こえた。それは幾度も擦れ、アゼムの切なく啼く声に重なる。
 エメトセルクは苦悶と悦楽に顔を歪め、頬を赤らめるアゼムをうっとりと見上げ、耳たぶに触れて、項に指を這わせた。自分ではない男に犯されて、気持ち良さそうに身体を火照らせているのを見ていると怒り、というより今はもっとこの男を暴きたいという不思議な欲に駆られる。
「ほらアゼム、エメトセルクがキミを見ているよ、どんな気持ち?気持ちいい?」
 ヒュトロダエウスはくすくすと微笑みながらアゼムを言葉で煽っていく。そうすると内部がきゅっ、と答えるように締めてくるのだ。
「ちゃんとエメトセルクを見て、アゼム。けどワタシのことも忘れないでくれよ」
 そう言って激しく貫くと、アゼムの身体がガクガクと揺れた。
 ヒュトロダエウスの言う通りにエメトセルクの目はアゼムから離れない。零れ落ちる玉の汗、痺れる身体を支えようと掴む腕、開いた唇からははしたなく漏れる湿る声。
 そのすべての仕草を記憶しているかのように。
「え、エメっ、ぁ」
 見上げてくる輝く金色の目と出会うと、アゼムはさらに頬を染めて目を逸らそうとしたが、エメトセルクに囚われて、そのまま唇を吸われ動かすことが出来なかった。零れる唾液を啜って噛み付いて、貪ればヒュトロダエウスによって貫かれる雄の力強さが増してくる。
 アゼムは手を腹へと伸ばすと、中途半端になっているエメトセルクの屹立した雄を自分のものと一緒に掴んだ。
 うっ、とキスの合間にエメトセルクがその手の中に重なった熱に呻く。雄同士の先から裏筋をぴとりと合わせてヒュトロダエウスの律動に合わせて擦れば、そこから伝達する熱波に溺れ、息が苦しくなる。
「アゼム、そろそろ、出そう……っ」
 ヒュトロダエウスは自分を満たすために抽送を繰り返し、またやってくる性欲の塊に身体の芯から込み上げてくるものを告げる。
 まるでアゼムとエメトセルクを抱いているみたいだな、と内心で思ったがきっとこれを口にしたらさすがにエメトセルクに一生口をきいてくれないかもしれない。
「アゼム」
 エメトセルクからも低く艶めいて名前を呼ばれ、手が重なると一緒になって雄を扱き上げた。
「アゼム、」
 降ってくる軽やかな声にも呼ばれ挟まれると、アゼムは与えられる膨張した熱に絡み取れ、淫らに落ちていく。
 思考はもう動物以下だろう。
 ただそこにある愉悦を全身で浴びたい。
「あ、ぁは、あ、もぅ、だ、めだッ」
 背中の太い骨が大きく撓り、アゼムが一番先に吐精した。それに続いてエメトセルクも自分の腹に同じ欲を飛沫させ、ヒュトロダエウスもその時にぶるりと身体を震わせて彼に中へと白い劣情を弾けさせた。腹へと流れる熱は残ったエメトセルクのものと混ざり合って溶けていくのをアゼムは感じる。
 ヒュトロダエウスが雄を引き抜きとこぽり、と液体が溢れた。
「ワタシとエメトセルクでいっぱいになったね、アゼム」
 腹を撫でればそこには注がれた二人の精が渦を作っていて、熱い。
 そしてその熱が一気に引いていくのを感じ、ぐったりと身体は急激に重たくなった。そのままエメトセルクの胸へと倒れ込み、背中を摩る手が気持ち良くてアゼムは目を閉じる。
 と、同時に気持ち悪い、と胸から込み上げてくる吐き気にアゼムは重なって倒れてくるヒュトロダエウスの身体を慌てて退かし、ベッドから転がり落ちた。
「うっ、気持ち悪い、かも」
 情事の余韻などこれっぽっちもない台詞を吐いて背中を丸める。
 それを見ていたエメトセルクは薄ら笑い、「お前は飲みすぎだ」と、人のことを笑えないだろうという言葉をかけた。
 アゼムはふらふらと立ち上がると、寝室から繋がっているバスルームへと歩いていく。
「キミも十分飲みすぎなんだけどねぇ」
 ヒュトロダエウスはラベンダー色の前髪を掻き上げて、すっきりした顔つきでエメトセルクをちらりと見る。
 彼も彼でどこを見ているのかわからない場所を見つめ、座っている。もしかしたら目を開けながら寝ているのでは、と思うほど静止している。
 全員どこも精液で汚れていてべたべたしている身体だった。
 ふとその時、エメトセルクは顔を上げるとアゼムの後を追うようにバスルームの方へ足を向ける。
 バスルームの洗面台では水を出す音は聞こえ、そこでアゼムは屈んでいた。その姿を見つけるとエメトセルクは背後に立ちアゼムの腰から内腿へ手を這わせていく。
「あっ、エメっ」
 アゼムは少し水を飲んで落ち着いたが、エメトセルクに後ろから抱き締められると身体を緊張させた。臀部に中る、エメトセルクの滾る熱を感じてしまったせいだ。
 エメトセルクはアゼムの顎を後ろから回した手を掴み口づけると、吐息を咀嚼して尻に宛てていた熱をその割れ目に挿れ込んだ。
「あ、ぁあ……、待っ、」
 エメトセルクは何も言わない。ただただそこにあるアゼムの身体を余すことなく、味わうことだけに取り憑かれているようだった。ぬるりと入り込んできた雄はまたその温かく湿った肉壁を擦り、穿つ。
「うっ、ぁ」
 硬度を取り戻した雄がそこへ埋まると、先に吐き出した精液が隙間から溢れ垂れ落ちる。
 エメトセルクは容赦することなくアゼムへとその衝動のままに、愛欲の塊をぶつけた。
 アゼムは腰を突き出して洗面所に手をつく。
 目の前に大きな鏡があって、そこには自分とエメトセルクの痴れた顔が薄闇に映り込んでいて、さらに身体の芯を再熱させた。もう十分だと思ったのにエメトセルクに触れられると、まだ、もっと、もっともっと欲しい、と身体はせがむのだ。
 腰を掴まれて激しく前後に挿入され、頭の中は真っ白だった。ただエメトセルクに望まれるまま繋がっていられればいい。
 灼熱が全身を犯し、淫猥な熱に脳が蕩けていく。
「あぁ、あ、う、は」
 気持いいか、と聞かれてアゼムは夢中に首を振った。
 気持いい、と声にならない声で訴える。
 そうすると嬉しそうにエメトセルクは口端を緩め、奥まで突き上げた。
「キミたちっていつもこんな感じなの?」
 小さなバスルームの洗面室で響く嬌声を聞きながら、最後に入ってきたヒュトロダエウスが壁に凭れながら二人の姿を眺めている。
 アゼムはそれを鏡越しに見つけ、濡れた青い目を細めた。
「それともお酒が入ったエメトセルクが特別なのかな」
 きっとそうだろう。こんな風になるエメトセルクは見たことがない、と思い返す。素面に見えてそうではない。白くて素面な顔をして実は飲酒の限界を超えると歯止めがなくなる欲求を持っているなんてアゼムも初めてのことだ。
 ヒュトロダエウスは愉しそうにふふっ、と笑って近づいた。
「キミも、アゼムも、すごい気持ち良さそう」
 エメトセルクはヒュトロダエウスに気付いているのか気付いていないのか、気配を後ろにやることはなかったが、ヒュトロダエウスに背を触れられるとようやく流し目で後ろを見やった。
「ねえ、エメトセルク、一度鏡を見てみてよ。自分がどういう顔しているのかさ」
 受け入れる側だけでなく、犯す側の方も両方を見る側になってみるとそれはとても淫らでぞくぞくと興奮する要因の一つだった。
 エメトセルクはヒュトロダエウスに言われるままに鏡を見る。
 そこに映るのは獣の交尾のようにしてアゼムに覆い被さる自分と、後ろに立つヒュトロダエウスの熱を帯びた瞳があった。アゼムの顔は伏せているからわからなかったが、自分の目は充血し、色欲で支配された姿だった。
 それがどうしたのだ、と思ったがヒュトロダエウスには欲を駆り立てるほどのなまめかしさがあったのだ。
 アゼムとはまた違う、雄としての崩れぬ色気と官能。
「アゼムはもちろんだけど、キミも十分に色っぽいよ、エメトセルク」
 そう言ってヒュトロダエウスは目の形を弧にして笑い、エメトセルクの顎を掴んだ。突然のことでエメトセルクは言葉をなくし、鏡の中の笑っている彼を見る。
「ヒュト──」
「ワタシはそんなキミも好きだな」
 欲しくなる、と囁いて顔をこちらに向けるとヒュトロダエウスはエメトセルクの惚けたままの唇を奪った。
 それをアゼムは呼吸を乱したまま見てしまい、思わず息を詰めてしまうがとても羨まして、美しいキスだなと思ってしまった。
「っ、おい、」
 エメトセルクは一瞬我に返るようにして慌てて口を離すと声を出したが、ヒュトロダエウスはけろりとした顔で、
「大丈夫、キミを食べたいなんて思ってないから安心して」
 と、言う。
「ほら、アゼムが寂しそうだよ」
 早く動いてあげないと、ともいつもとなんら変わらない軽快な声色で言うとアゼムの臀部を撫でる。
「あっ、」
 促されるようにエメトセルクは止まっていた律動を再開すると、じゅくじゅくと繋がった箇所が甘い痺れに沈んでいく。
 ヒュトロダエウスの張り詰めた熱をエメトセルクは自分の臀部に感じて身体を強張らせたが、彼はそういうつもりないらしい。その熱の先を二人の繋がっている場所へ宛てて、揺れる動きに合わせて擦った。
「あ、あっ、エメっ、ひゅ、と、あ」
 鏡から目が離せない、とアゼムは今までにない興奮に満ちていた。
 自分を穿つエメトセルクがいて、そのエメトセルクの胸板をヒュトロダエウスの手が摩っている。
 エメトセルクは眉を顰め、短い呼吸を繰り返して腰を振った。
 ヒュトロダエウスの手が胸から鎖骨、首、顎へ熱い頬へ触れていくとまた顔を寄せて彼の薄い唇へ唇を重ねた。
 鏡から見ていてもわかる。その煽情的で淫蕩な仕草の高揚感。キスをする姿を間接的に見せられる、というのは味わったことのない焦がれだ。
 自分を犯しているのに塞ぐ唇は自分ではない別の男。
 舌を出せばエメトセルクもその舌を絡めて、淫らに夢中になって口づける。驚くことはもうせずにそこにある快楽を受け入れて、自分を犯しながらもう一人の男から甘い毒を食んでいるのだ。
 それはとても刺激的で、感じたこともない背徳で、じりじりと身体に灯った熱が快感に浸っていくのがわかる。思わず、ずるい、と思ってしまう。
 何がずるいのかわからないけれど、あのキスがずるいと。だからアゼムは意地悪をするように自分から腰を擦り付けて前後、横と振りエメトセルクの欲情を自分だけへと向けさせた。
「アゼム、っ」
 急に襲われる熱の波に、エメトセルクは苦悶するとしっかりとアゼムの腰を掴んで大きくグラインドさせる。
 また絶頂が近くなり、何度も打ち付けて奥を抉ればアゼムが声を震わせた。
 誰も吐息なのかもわからないぐらいに混ざり合って、感覚の全てをこの肉欲に委ねる。
「っ、出すぞ、」
 エメトセルクは埋め込んだ雄を激しく肉壁を赤くなるまで穿ち、擦り付けて何度目かになる身体の熱を暴走させる。
 アゼムの切れ切れになる喘ぎと、エメトセルクの乱れた呼吸。
 肌と肌がぶつかる音は大きくなって欲望のままに抉れば唐突にその瞬間がやってくる。
 イく、と囁いた言葉と同時にエメトセルクはアゼムの中へとどろどろになった劣情を流し込んだ。

 


 目が覚めて、これは一体どういうことだと声にならない悲鳴を上げたのはもちろんエメトセルクだ。
 三人転がって、しかも全裸のままで寝ていれば一体何があったのかと叫びたくなるのも当然だが、何をしたって言われても、とあくびをしながらヒュトロダエウスは窓から注ぐ朝日の目を細めた。
 エメトセルクの隣では寄り添うようにアゼムが爆睡している。
「覚えてないの?あんなに楽しく三人でセックスしたのに」
 そう朝からとんでもない単語をさらりと口にしたヒュトロダエウスが問えば、エメトセルクは顔を真っ青にして首を振った。
 確かに昨晩は飲みすぎたとは思うが、まさか記憶が飛んで何があったのか覚えていられないほどだとは思ってもみなかった。が、現実はそうらしい。
 あんなに、とはどうあんなに、だろうかと考えたくもない。とんでもないことをどうやらしてしまったことだけは、ヒュトロダエウスの顔を見ればわかる。
「……最悪だ」
「ええ、ワタシはそうは思わないけどな。いい思い出になったし」
「人の気もしらないでよくもそう減らず口が叩けるな。もうお前らとは飲まん」
「そんなに怒らないでよ、キミだって愉しんでたよ?」
 この頭痛は酒が抜けきらないせいなのか、それとも昨晩の出来事のせいなのか。
 ヒュトロダエウスの言葉の意味をどう捉えていいのかわからず、いやわかりたくないと前髪をくしゃりと乱した。
 エメトセルクは痛む頭を抱えて、もう一人の人の気も知らないで、と文句をぶつけたくても満足そうにまだ寝ているアゼムの顔を睨むことしかできなかった。

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